「あんたあの〜なんだな、釣り番組出てる女の子、あの子すごいけどあんたもすごいよな〜。素人じゃねえな。」

 去年、大磯海岸で弓角をブンブン投げていたら、ゴルフクラブをブンブン振り回している(めちゃめちゃ怖かった)おじさんに捕まった。 そしておじさんは我々に「それじゃだめだ!」「こうしな!」と勝手にコーチングし始めた。 しかもおじさんは全然釣り道具を持ってない。持っているのはゴルフクラブのみ。釣りはしないんですか?と聞くと、近所に住んでいて以前は毎日投げキスや弓角をしていたが、釣り仲間が最近減ってしまい面白くないからやらないとのこと。「まさか私を釣り仲間にして復帰するつもりか?」不安がよぎる。しゃべりすぎる釣り仲間は好きではない。こちらが釣りにならないからだ。しかもゴルフクラブ振り回しながら浜をウロウロしている人って・・・

 おじさんは投げキス派らしく、角を投げている私と相棒に円心投法を強要する。怖いのでしかたなく二人でやってみて見事に仕掛けがPEごとぶっちぎれる。おじさんは「タイミングが悪いんだ!」と鬼コーチの気分になっている。あ〜あ、今までで一番やっかいな人につかまっちまったよ・・・。

 おじさんはゴルフクラブを持ってはいるが素振りするわけでもなく適当にぶん回している。なんでゴルフクラブを持っているのか聞くと「最近の若者はおっかねえから、護身用だ。」という返事。大丈夫。絶対、誰もあなたにはちょっかい出さないよ。

 適当に相づちウチながらそれでも一生懸命に角を投げていると、おじさんが「おい!あそこだ!ナブラ出てるぞ!」と叫ぶ。本当だ、ナブラだ!それまで邪魔されている感が強くちょっと不機嫌だった私は急に元気になった。そしておじさんはあちらこちらにナブラを発見しては知らせに来る。その目の良さにだんだん感心し始めていた。

 「ナブラ見つけるの早いですね〜。」
 「あったりまえだよ。ここに子供の頃からいるんだよ。」

 しばしナブララッシュの後、また海が静になった。おじさんは結局、私と相棒が撤収するまでず〜っと勝手に話しまくりのアドバイスしまくり。「じゃあ、私たちこれで帰ります。さようなら!」というと、「おれは毎朝ここ散歩してっからまた会うな!」と・・・釣りの度にこんなに話しかけられたら釣れるモノも釣れない!結局その日は丸坊主。そのおじさんが怖くてしばらく他の浜へ通ってしまった小心者の私であった・・・。
おやじ

2003.7.5
mami