海釣りとは関係のないお話しですが、思い出しちゃったので書いてみます。私的にはかなり説明不可能な、X-FILEです。

 2000年の初夏、だったと思います。奥多摩のとある源流へ相棒とヤマメ釣りに出かけました。そのころ既に、何度か渓流釣りを経験して、私はすっかり調子に乗って相棒より先に川上へ〜川上へ〜っと釣り上がっておりました。(渓流では先に上流を探った方がなんとなく有利らしいです)そして、がんがん進みすぎて、相棒の姿が見えず声も聞こえないことに気づきました。「ま、彼はベテランだから大丈夫だよね。」と1人川のせせらぎを聞きながら釣り糸をたれていると・・・

 「・・・・・。」

 ものすごくかすかですが女性の声が聞こえた気が?・・・川のせせらぎでよく聞き取れません。じ〜っとして耳を澄ませてみますと、

 「○○○・・・・気を付けて・・・・・。」

 へ?何?誰か他のグループがしゃべっているのかな、と思いつつとても気になるのでまた耳を澄ませてみると、やっぱり女性が1人でつぶやいている(叫んでいる?)。遠くの方から聞こえる声なのに、なぜか耳元で囁かれているような不思議な声。突然、全身の毛が逆立つような感覚に襲われ、あわてて相棒を探しました。20メートルほど川下に降りていくと、相棒は普通に釣り糸をたれています。

 「ねえ、女の人の声、聞こえた?」

 「いや、何、誰か悲鳴でも上げてた?」

 「ううん、そんなぶっそうな感じじゃないんだけど・・・ねえ、そろそろ帰ろう。」

 「疲れた?じゃあ帰ろうか。」

 我々はそのポイントに、山道からガードレールを乗り越えて、半ば逆ロッククライミング状態で降りたために、もちろん帰りは正式なロッククライミングです。そういう場面が多いので、いつも相棒に、源流の釣りでは帰る時の体力を残しておくように言われていました。そしてえっちらおっちら6〜7mの岩壁を上ってあとちょっとでガードレールに手が届く、という時に事件は起こりました。腕力の限界でちょっとふらついた私を下にいた相棒がぐぐっと持ち上げてくれたのですが・・・持ち上げる力+自分でよじ登る力で顔面をガードレールに強打。

 「うっ・・・★☆★☆?!?!?!?」

 痛すぎて声になりません。相棒もあまりの意外な展開に驚いてぽかんとしています。なんとかよじ登り道路に戻って相棒に傷を見てもらうと、「血、出てるしものすごいたんこぶになってる・・・。」

 後日、おでこの絆創膏を見た友人達に「どうしたの?」と聞かれる度に説明が面倒くさくて面倒くさくて・・・だって「ガードレールにぶつけた。」って言ってもみんな理解してくれないんですから。

 で、「気を付けて・・・。」の声は、「ガードレールに気を付けて。」だったのかなあ、と今でもふと考えてしまいます。あのとき、山の主というか、精霊とでもいいましょうか、禁断の領域に住むモノの気配を感じてちょっと怖かったです。あれ以来、渓流には入ってません。
 

2003.7.26